2017/01/03

つれづれ2016B

B面です。


今年はなんとなく「交響曲の年」であったような気がします。
割と無理矢理ではありますが。

何と言っても、交響曲という単語で近年最大級に話題になったあのお二人が、両方とも動きを見せたというのが目が離せないところであります。誰あろう佐村河内守氏と新垣隆氏です。
前者については、ご本人が動かれたというよりは森達也監督『FAKE』がついに公開されたというのがまず第一でしょう。公開初日に観に行きました。残念ながら舞台挨拶の回は買えませんでしたが……
開演直前まで『祈り』を聴きながら座して待ち、鑑賞を終えるなり『祈り』を頭から再生して「♪ダラララー!グワシャーン!!」という感じで映画館を去りました。面白かったです。ドキュメンタリもエンタテインメントとして作為的に作り込めるんだということが単純に新鮮でしたし、当然それまで電波に乗っていたのとは違う佐村河内氏をたくさん観られたというのも面白かった。豆乳美味しい。
タイトルが指し示すように真偽・敵味方・善悪のような構図が鑑賞者の中でめまぐるしく入れ替わる作品であり、何かの結論をどうにか得ようとしても無駄という作品ではありましたが、
一つ、スキャンダルからほどなくして刊行された暴露本の中に第二の代筆者の存在がほのめかされていましたが、この作品では一切触れられていませんでした。森監督がその存在を認識していなかったのか、編集者裁量で磨き落としたのか、または佐村河内氏が上手に隠したのか、はたまたスキャンダルの勢いで噂が一人歩きしただけなのか。そのどれであっても(どれでなくても)、
新垣氏は旺盛に演奏活動・作曲活動を行なってCDも出し、佐村河内氏はそうではなかった、
というのは取り急ぎ2016年の事実の一つではあるわけです。
もちろん水面下では様々に活動しておられるのだと思いますが。Twitterであれだけパワーのある言葉をたくさん発しておられるのですから。そのTwitterアカウントでは、なんというか実に魅力的というか気になるというか、そういうツイートを繰り広げておられるので、ついつい言葉の仕事の人というか、実務者よりはプロデューサーの方なのかなーと思ってしまいます(あれだけ様々にツイートしておられながらも『佐村河内守が曲を作ったぞどうだ!ババーン!!』が事実上無いということもあり)。


新垣氏の演奏会には、行きたかったけど行けず。CDは買いました。交響曲と協奏曲。いわゆる邦人作品のように音楽的コンセプトを前面に押し出すでもなく、でもシリアスでエンタテインメント性は低く、かといって世紀末叙情主義()のように即物的な美しさにひた走るでもなく、正直まだよくわかりません。もうちょっと聴き込んでみないと。
ただ自伝でも「駄菓子的音楽」は必要だといっておられてその考え方はとても共感するものがありますので、そういう作品をどんどん生み出してほしいですし、他方「小品」のようなゴテゴテのもたくさん買いてほしいです。それとは別に新垣氏のマネジメント会社(お兄さんがやっておられる?)は早く佐村河内氏との権利関係を整理して交響曲第1番や諸作をなんとかしてほしい。諸々の事情がおありなのはもちろんわかりますが、極端な話 摂取する側としては、当人お二人のゴタゴタは作品そのものと比べればどうでも良いといえばどうでもいい事です。よろしくお願いします。
2016年最初に聞いた交響曲はTOKWOのジェイガー1番。2013年にウインズスコアから復刻されたのが何か取り上げる契機になったりしたのかしら。骨太でよかったんですが、個人的にはそれよりも中橋氏の委嘱新作「陽炎(かぎろひ)の樹」が非常に印象に残りました。特に2楽章(?)の繊細に制御された木管群は目眩がするほど。いわゆる「前半メロディアス、後半イケイケ」といった中橋氏流コンクール構成からは外れているあたりも、好感が持てました。どうでもいいですが勝手に和製ダフクロだなーと思いました。いずれも個人の感想です。
同じくTOKWOの、交響曲x3演奏会。スミスの交響曲をライブで聴くのは初でした。この作品を知ったのはキラウエアウインドの音源からでしたが、いわゆるスミス三部作と比べると真面目というか、これが彼の交響曲なのかーという感じ。メインのバーンズ3番はよく取り上げられることもあり、なかなか出色の出来に出会いづらいですが、ジェイガー2番は今回の白眉。ジェイガー1番の時はノビリッシマとジュビラーテがセットでしたから、それらとこの時の2番のライブ音源を組み合わせて1枚を作ってくれるのでは?と思ってしまいました。
そういえば、ミュゼダールも5月に交響曲特集してたんですね。こちらは気付いた時には終わってたので行けなかったですが、行けるものなら……!選曲も、バーンズは定番で避けられないとはいえ、長生淳とマッキーという攻めた構成。定番・邦人・最新という感じでしょうか。あと交響曲ネタでは、広島ウインドが保科先生の1番2番でやってましたね。これも行けなかったので、なんとかいい感じに音源化してくださらないかしら。
さて交響曲からははずれますが、6月にはShionの「これでもか」コンサートがありました。これが2016年一番だったかもしれません。ファンファーレとアレグロ、いにしえ、ルイブルジョア、スターウォーズにシルクレットのTb協奏曲と華やかであったり重厚であったりシリアスだったりポピュラーだったり硬軟併せ持つ構成(なんとなく、『宇宙の音楽』吹奏楽版世界初演を行った大阪市音楽団第90回定期の時にも似たバランス感覚だ。そういえばあの回は初演が3曲、交響曲あり、オペレッタやミュージカルのセレクションありと盛りだくさんでS席3000円とか、今思い返してもマジイかれてる。なぜ行かなかったのか。この時のようなスパーク氏とシオンの熱い関係が戻って来たらいいな……)。ファンファーレとアレグロはまさに一糸乱れぬ塊になって音が飛んでくるオープニング。洒脱なシルクレットを挟んで、緊張感たっぷりのいにしえ。急速部の拍子が交錯する感じは、丁寧なテンポ設定からかスリリングさを煽るアプローチとはまた違った味がありました。細かい音符の音が短すぎて楽器が鳴ってないような演奏だと、なんか色々もったいないですからね。
ルイブルジョアはいにしえで体力を使ってしまったのか(笑?)ちょっとほどけた感じが各所にありましたが、それはそれで「が、頑張れ…!」みたいな。特に、ピッコロトランペットのソロは、ホール全員が心を一つにして応援した瞬間だったのではないかと思います。ソロ後は、奏者と同じくらい聴衆も安堵したような気がします。よくわかりませんが。スターウォーズは、時期的にはエピソード7とローグワンに挟まれたちょうどいい時期で、そういうところでプロの楽団が定演で取り上げるというのがさすがショーマンシップ溢れるシオンだなーと思いました。よくわかりませんが。編曲はしかし、できればあのメインタイトルのファンファーレを聴きたかったという人は多かったのではないかなと想像しますが……(かつて市音時代のポップステージ2で演奏していた真島版ではダメだったとですか…?)
そしてスミスの交響曲、ルイブルジョアと来ましたが、年末にいよいよアレな演奏会が催されました。
オーチャードブラス、スミス三部作+宇宙の音楽コンサート。二公演。二公演とも行きましたが、遅刻してルイブルジョアを聴けませんでした(笑)
一応音源がリリースされるとのことですが、昼公演と夜公演の間に結構時間があったのですが、録り直しとかされてたんでしょうか(※していてほしい、お願い。という意味で)。
イベントとしては大変面白かったのですが、当然ながら、腕利き若手集団をハイテクに回したければ指揮者も選曲も多分ああではない訳で、面白いイベントという感想に留まってしまいます。というわけで、シーガルが白眉でした。素晴らしかった。このノリですと、来年は例えば畠田先生を招聘して畠田先生編曲コレクションやってほしいですね。ブルックナーとか。
オーチャードだと、三月の東フィルオーチャード定期にも行っていました。佐渡裕のタルカスとラフマニノフ2番。この時が初オーチャードだったのですが、席のせいか割と像がぼやけ気味で、狂ったように乱雑に演奏してほしいタルカスではボヤンボヤンになってしまった気が……難しいですね。小さめの箱じゃないと鳴らせない曲なんでしょうか(編曲者の吉松氏もサントリーの方に行ったご様子ですが、概ね同じ方向性の感想をブログに書いておられた気がします。「前日のオーチャードホールではどうだったのだろう」>「多分おんなじでした、先生」)。
まさかその数日後にキースエマーソン氏の訃報が届くとは思ってもいませんでした。吉松氏のその時のブログエントリは静かな悲しみに満ちていて、今読み返しても少し涙がでそうになります。その中で触れられている協奏曲もいつか聴きに行きたいものです。
ラフマニノフ2番はめちゃ期待していたのですが、前日まで忙しかったこともあってか気づいたら寝ていました……不覚! や、でも、2番の有名なアダージョは催眠効果高いですかr

音源関係。
TOKWOのジェイガー1番の回で初演された「陽炎の樹」を大トリにした邦人作品集が発売されました。これと相前後してシエナの邦人作品集も発売されました。後者は、邦人作品特集の演奏会のライブ録音。一回の演奏会の内容という点が前者と違います。超有意義な企画だと思いますが、コンテンツ力はどうしても前者にかなわない感じでした。なんといってもスタミナを要するプログラムなので、一回の演奏会でやるとなるとどうしても精度が……。他方「陽炎の樹」は数回分の演奏会からのピックアップで、どの演奏も「この曲の決定版!」的演奏。TOKWO版科戸や原典版パガニーニロストは前年にライブで聴いていましたが、マインドスケープやI love 207も素晴らしい。特にマインドスケープは終演後に会場全体で十分に余韻が消えるのを味わってからの拍手が収録されており、なんかもう、「こうじゃなくっちゃ!!」と興奮します。間違っても、最後にベーッとTpの音を足したり、間髪入れず快哉を叫ぶようではいけません。
さらにこの名盤には「レント・ラメントーソ」が収録されています。真島俊夫先生は2016年4月にお亡くなりになられましたが、寡聞にしてこの作品は「陽炎」を手にするまで耳にしておりませんでした。作品単体として素晴らしいだけでなく、この盤の『濃い』収録作品の中では爽やかでロマンチックな本作が清涼剤的な、独特の立ち位置で光っているようにも感じられます。春以降、真島先生を追悼する演奏会が各地でありましたし、また2017年もそれに関連した選曲が行われることでしょう(年末12/25のリベルテの演奏会は真島俊夫特集でしたね。また2月の呉音楽隊は三つのジャポニスムを取り上げるご様子です)
この「陽炎」が6月。TOKWOは2月にも、同様にいくつかの演奏会からセレクトして「リード特集」な盤を1枚出しています。これも名盤。交響曲2番が渋すぎです。アルメニアンダンス全曲は「陽炎」の科戸・パガニーニロストと同じ回に演奏された音源なので、この二枚によってその回の内容をほぼ追体験できるようになりました(あとはヒンデミットの交響曲が出てませんが、これは……どういう企画であれば組み込めるのか……)
さらに11月には、2014年11月のシズオクワハラ氏を指揮に招いたアメリカ特集がリリースされました。これはひょっとすると2017年1月末のシズオクワハラ氏のローマ特集でのサイン会用?まだちゃんと聴けていませんが、とりあえず春王いいです。ゲストの協奏曲枠「ラプソディインブルー」がカットされてないのも嬉しい。
ちなみにシオンの「いにしえ」も音源化されましたが、こちらは協奏曲枠はカットでした。どうにも音源化される時にはカットされがちな協奏曲枠です(事情はお察し)。息の長めないにしえやルイブルジョアコルネットソロでおうちでも目頭を熱くできます。
シオンも、不定期ながらTOKWOも、定期演奏会を着実に音源化してくれるのは本当に嬉しいですね。ライブで聴いた時と家で聴く時とでは印象が違うので、それを聴き比べるためにもやはり現地に出かけなくてはという気持ちになります。そういう意味ではシエナの邦人特集回はよくぞという感じ。逆に、ローマ三部作は今年あたり出るかなと思ったんですが……出ず……これはなんででしょうか?よくわかりません。ブラブラで忙しい感じでしょうか〜(これについては、個人的にはイベント名の割に「だったらちゃんとブラスで頼むよ!」というガッカリ感と初回時の「お、こんな面白そうなイベントやるのか!?」という驚きからの「今年もやるんかーい」「あ、今年もやるんかーい」という毎年開催化というガッカリ感といつまで経っても妖星乱舞をやらない感とでなんとも言えずアレな心境。色々なバランス感覚を欠如させて(※褒めています)決行したGSJを見習って(?)ほしい)。

あとはやっぱり映画が大盛り上がりの一年でしたから、サントラ収集がはかどりました。君の名は。のRADWIMPSも素晴らしいし、シンゴジラの伊福部スコアvs鷺巣先生という感じもいいし、聲の形はそもそも聴覚に関する作品ですから、サントラが担う意味の重さたるや。
で、かの作品については、上映期間中はできるだけ見に行くようにしたり、立川で極上音響上映があれば見に行ったりと頑張りましたが、やはりというかなぜかというか二期は見れませんでした。いや素晴らしいのだとは思いますが。またいつか落ち着いたら見れる日が来るでしょうか。アナザーサイド的な小説作品が続いているのも非常に応援したく思います。
あ、音源周りで最後に。東京芸大ウインドの「スパーク/ヴァンデルロースト」がかなりの名盤だと思います。前年の「リード/スミス」に勝るとも劣らない。特に宇宙の音楽については、この作品の現時点での決定版的演奏になっているのではと思います。これにも乗ってる方でぱんだにも出てた方もいるでしょうか。ひたすら宇宙の音楽な一年になった感じですね…!それ以外の「祝典」「モンタニャール」「カンタベリーコラール」「いにしえ」どれもやはり決定版級。コラールはパイプオルガン付きだし、サックスパートには須川展也さんが乗っていたというから、総力戦っていう感じでした。シリーズ3枚目にも期待です。それこそバーンズの3番が…?

2017年まわり。まずは神奈川大学のワインダークシー。昨今これだけ当たった交響曲があったかというくらいですが、いいぞもっとやれというか。邦人の交響曲もこれくらい当たるといいですね……(あらぬ方向を見ながら)。バーンズやデメイの交響曲のように、『残る』シンフォニーになるか注目が集まります。
エヴァvsシンゴジラ交響楽もありますね。チケット当たるといいなー。あと、そこでのサプライズでシンエヴァの公開日が発表されたりするといいなー。わかりませんけど。
一月末にはTOKWOの定期でキルクムマキシムスがあります。バンダがたくさんいる作品ですが、そこには航空中央音楽隊がゲスト参加。締めはローマの松ということで、そっちのバンダもひょっとして……?なんてことになれば、これはなかなか聴けない演奏会になりますので、とても楽しみ。TOKWOだと長生淳委嘱初演のピアノ協奏曲もあります。やばい。
そしてシオン。バーンズの8番自作自演 inロームシアターや「華麗なる舞曲・ダンスムーブメンツ・交響的舞曲」というダンス特集、来年2月のシンフォニエッタ。特にダンス特集、まじ頭イかれてるでしょ?的な楽しさがあります。交響的舞曲は指揮者自身の編曲というのがまた。逆に秋山先生のシンフォニエッタ回はテーマがなぞでございます。一体? 展覧会の絵の時は何気に「組曲特集」というコンセプトもあったので、今回もきっとコンセプトがあってのことだと思いますが。
オオサカンはカルミナ・ブラーナがありますね。これも全曲はなかなかないので、行けたら行きたい。なかなか聴けない系でいえばマーラーの千人あたりもそろそろライブで聴きたいですが……まだちゃんと聞ける自信がありません……
天野正道先生還暦に際し、記念演奏会群が催されますね。こういう時こそ『ガイア』とか『グラール』とか、「GRシリーズ全部」とかやってほしいですが……w

そんな2016年〜2017年でした。

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